研究者(学者)や教育者(教師)の立場では、制約のためにできにくいことであっても、生活者(教材作家)の自由な立場であれば、できることもあるのではないでしょうか。
 「教材ファイル」は、そのような教材作家の可能性についての事例集です。

教材ファイル

第1回 やさしい星の書き方 正五角形と黄金のエル(2009年10月28日)

 コンパスと定規を使った正五角形の作図法です。
 「黄金のエル」を使って新しい作図法を生み出すこともできます。
 「黄金のエル」による正五角形の作図法は、コスモ定規という黄金直角三角形を応用した教材の完成度を高める過程で発見されたものです。
 高度な数学理論ではなく、教材作家による教材制作上の素朴な工夫による成果だと思います。

第2回 角の三等分問題 ミトブ法と正九角形の作図(2011年12月1日)

 定規とコンパスを使った角の三等分技法「ミトブ法」による実用的な作図法です。ゲームや分度器の作図などにも利用できます。
 角の三等分は数学的に不可能であることが証明されており、数学者や数学教師が取り上げることには抵抗があると思われます。しかし「スーパーミトブ」のように簡単で実用的な角の三等分技法は、角の二等分と同じ容易さで作図可能なので、覚えておくと便利だと思います。
 作図法は正統な数学では認められなくても、作図理論は正統な数学によって説明できるものであり、数学の授業で採用できるものだと思われます。

第3回 小林秀雄とベクトル史観(2012年5月21日)

 教材作家は、白いカンバスに自由に絵を描く画家のようなものだと思います。
 ベクトル史観は、小林秀雄の作品に触れた印象を、一枚の絵に描いたものです。
 「様々なる意匠」の中の「生き生きとした嗜好と、溌剌たる尺度」、「無常という事」の中の「常なるもの」、「常識について」の中の「コモンセンス」、「本居宣長」の中の「やまとごころ」、小林秀雄の作品の中に一貫して流れている日本人の心に対する印象を、教材作家として一つの教材に組み上げたとき、それは一つの歴史観、世界観となりました。これは、第4回の「やまとごころの歴史観」に発展します。

第4回 日本の歴史と心の原形 やまとごころの歴史観(2013年2月21日)

 生活者(教材作家)の視点で書かれた日本の歴史です。この歴史観は、研究者(学者)や教育者(教師)によって学校で教えられる科学的歴史観とは異なる、一般の生活者による常識的(日常の生活観に基づく)歴史観の一つです。
 「真理を得る為には、直観と演繹という精神の基本的な誤りようのない二つの能力を使用すれば足りる・・・(真理を得る為の)仕事の背後では、目に見えぬ、極度に純化された常識(コモンセンス)が働いている」(小林秀雄「常識について」)  「やまとごころの歴史観」では、「常識」という言葉をこのように捉え、専門的な「科学」という言葉に惑わされず、日常的な「常識(コモンセンス・やまとごころ)」をもって歴史を認識しようとしています。