今回は、定規とコンパスという二つの教材を使った角の三等分技法についてお話しします。
その技法の名前は「三武(MITOBU)」。
ミトブ(三武)の名前は、「三つの的(まと)を一本の矢で貫き通す武芸」という作図法のイメージから付けた教材用語です。
ミトブは、ギリシアの三大作図問題の一つである「角の三等分問題」をヒントにして製作した、子供たちが定規とコンパスをゲーム感覚で楽しみながら上手に使えるようになるための教材です。
全体の内容は2部に分かれます。
第1部・・・定規とコンパスによる角の三等分技法「ミトブ法」について
@ミトブ法について A第1象限のミトブ(基本のミトブ:学習用) Bミトブ法で角の三等分ができる理由
Cスーパーミトブ(基本のミトブ:競技用) D第2象限のミトブ E第3象限のミトブ F第4象限のミトブ
G三武法段級位認定 H教材ゲーム「ミトブ」 I教材ゲーム「宇宙砲ミトブ」
第2部・・・正九角形の作図や、分度器の作図、A4用紙など書類の三つ折り法について
@正九角形の作図 A分度器の作図 B書類の三つ折り法「ツケヒキ法」
■ミトブ法について
ミトブ法(三武法)を練習すると、数学の授業で学習する「基本の作図」(垂線・平行線の作図、角の移動など)を楽しく身に付けることができます。そして定規とコンパスを使って正九角形の作図ができ、さらに半円の180等分が可能となるので、定規とコンパスを使って分度器を作図することもできます。
まず、斜辺上の好きな位置に、コンパスを使って基準点を付けます。コンパスの幅は、三等分したい頂角と基準点の距離に開きます。
「一の的」
頂角にあります。
「二の的」
基準点から、底辺に下ろした垂線上にあります。
「三の的」
基準点から伸びた、底辺に対する平行線上にあります。
「二の的」(競技用ミトブ)
ミトブ法には学習用と競技用があり、競技用ミトブの「二の的」は、コンパスの幅を変えずに基準点を軸として描いた弧の上にあります。
10段階の学習用ミトブでは、「二の的」と「三の的」との間の距離は、頂角から基準点までの距離の2倍です。
7段階の競技用ミトブでは、「二の的」と「三の的」との間の距離は、頂角から基準点までの距離と同じです。
3つの的の位置が定規によって一直線上に並んだら、コンパスの芯を頂角に当て、定規に沿って直線を引いて完成です。
三武法では三つの的に照準を定めますが、第1の的は角の頂点、第2、第3の的はコンパスの両端と定規を使って位置を決定しました。
それでは矢は本当に、三つの的に当たったと言えるのでしょうか。第1の的は見えますが、第2、第3の的は目に見えないからです。
もし基準点から引かれた垂線や平行線が傾いていたら、そしてもしコンパスの幅が正しくなかったら、矢は第2、第3の的から外れてしまいます。
ミトブ(三武)は成功したのか、それとも失敗したのか、その判定には分度器を使います。
判定者は、分度器で最初の角度を測ります。それが60°であれば、「基準角(きじゅんかく)60度」と言います。
次に判定者は、ミトブ(三武)を行った人が三つの的に照準を定めて引いた線の角度を測ります。それが20°であれば、「照準角(しょうじゅんかく)20度」と言います。
ミトブ(三武)が正しく行われると、照準角は基準角の3分の1になります。
ミトブは角の3等分ができるのです。
第1象限(0°〜90°)の角の三等分技法です。
第1象限のミトブを「基本のミトブ」と言います。基本のミトブには10段階の「学習用」と7段階の「競技用」があります。
学習用ミトブは、次の10段階です。
@ コンパスを好きな幅に開き、コンパスの針を3等分したい角の頂点に当てて円を書きます。これを第1の円とします。
A 第1の円と斜辺との交点を基準点とし、コンパスの針を基準点に当てて円を書きます。これを第2の円とします。
B 第2の円と底辺との交点(右側)にコンパスの針を当てて第3の円を書きます。このとき第1の円と第3の円との2つの交点を結ぶと、底辺に垂直な線が書けます。
C 第3の円と底辺との交点(右側)にコンパスの針を当て、斜辺と底辺との間で第2の円と交差する位置に印を付けます。この印と基準点を結ぶと、底辺に平行な線が書けます。(図の4点を結ぶと平行四辺形が書けます)
D 基準点から底辺に対する垂線を書きます。
E 基準点から底辺に対する平行線を書きます。
F コンパスの幅を第3の円と底辺(または第2の円と斜辺)との2つの交点の幅に開きます。円の半径になっているコンパスの幅を、円の直径に合わせるのです。ここでコンパスの幅は2倍になりました。
G コンパスの芯を垂線上に当て、コンパスの針を平行線上に当てます。ミトブ法が正確に行われると、垂線上のコンパスの芯は第2の的(まと)の位置を示し、平行線上のコンパスの針は第3の的の位置を示します。
H 第1の的である頂角に定規を当て、その点を軸として定規を動かします。そして第2第3の的の位置を指し示すコンパスの両端が、定規によって第1の的と同じ直線上に来るように照準を合わせます。そのときコンパスの両端は、それぞれ垂線と平行線から離れないようにします。
I 3つの的の位置が決ったら、コンパスの芯を頂角に当て、定規に沿って線を引いて完成です。
「基本のミトブ(10段階)」を練習すると、数学の教科書で「基本の作図」とされるもののうち、「垂線の作図」と「平行線の作図」が正確にできるようになります。
基本のミトブ(10段階)では、コンパスの幅を途中で2倍に変えました。そこに角の三等分ができるポイントがあります。最初のコンパスの幅を「1」の線、それを2倍した次のコンパスの幅を「2」の線で表してみます。
ミトブ法が完成した形を見ると、垂線と平行線と「2」の線によって直角三角形ができていることがわかります。
直角から「2」の線に向けて「1」の線を引いたときに、「1」の線は「2」の線の中心に到達します。なぜならこの点を中心として、直角三角形が内接する半径「1」の円を書くことができるからです。直角三角形の底辺の両端を円周上で結ぶ弧を見ると、その中心角と円周角との比は2対1です。それぞれの角を「2の角」「1の角」とします。
ミトブ法が完成した形を見ると、「2の角」は二等辺三角形の底角で基準角の一部と等しく、基準角の残りの部分は錯角になっている「1の角」と等しいことがわかります。こうして基準角が2対1に区分できることになり、大きさ1の角は基準角の3分の1になるので、角の三等分ができます。大きさ2の角が二等分できることはすでにわかっているからです。
※参考文献(数式を使った証明について)
・ 矢野健太郎「モノグラフ数学史」科学新興新社
・ 矢野健太郎「角の三等分」ちくま学芸文庫
基本のミトブには、先にお話した10段階の学習用ミトブと、手順を簡略化した7段階の競技用ミトブがあります。7段階の競技用ミトブを「スーパーミトブ」と呼びます。
これは垂線と平行線と「2」の線によってできる直角三角形の外接円の中心が、第2の円の円周上に必ず来るという性質を利用した作図法です。
この直角三角形の外接円の中心に第2の的(まと)を置くと、そこから平行線上の第3の的までの距離は「1」になります。
この方法によると、垂線の作図やコンパスの幅を2倍にする手順を省略できるので、作図が早くなります。
スーパーミトブの7段階の手順は次の通りです。
手順1〜3は角の2等分の作図と同じです。手順3では、基準点を軸として長めに弧を描きます。手順2と3で描いた弧の交点と角の頂点を結ぶと角が2等分されます。角の3等分では、手順4で交点と基準点を結び、底辺に対する平行線を書きます。
手順5: 定規を角の頂点に当て、コンパスの両端を定規の縁に当てます。そのときコンパスの芯は、手順3で描いた弧に一致するようにします。
手順6: コンパスの針が平行線に到達するまで定規を動かします。その結果、角の頂点と弧と平行線上の3つの的が同じ直線上に並び、照準を合わせることができます。
手順7: 3つの的の位置が決ったら、コンパスの芯を頂角に当て、定規に沿って線を引いて完成です。
スーパーミトブの手順は7段階で済み、しかもコンパスの幅を変えることもないため作図が早く簡単になります。
しかし、「垂線の作図が含まれない」「なぜ角が三等分できるのか理由がわかりにくい」という欠点があります。
そのため、初めのうちは学習用として10段階のミトブを練習し、その後で競技用としての7段階のミトブ(スーパーミトブ)を行ってください。
以下の第2象限から第4象限のミトブについては、基本のミトブを10段階の学習用ミトブによって説明しています。
第2象限(90°〜180°)の角の三等分技法です。
@ コンパスを好きな幅に開き、コンパスの針を3等分したい角の頂点に当てて円を書きます。これを第1の円とします。
A 第1の円と斜辺との交点にコンパスの針を当て、斜辺と底辺の間で弧を描きます。
B 第1の円と底辺との交点にコンパスの針を当て、斜辺と底辺の間で弧を描きます。
C ステップAとBで描いた弧の交点を通る線を、頂角を起点として書きます。この線は第2象限の角を2等分する線で、第1象限上にあります。
D〜L ステップ@〜Cで書かれた線に対して「基本のミトブ」を行います。基本のミトブの第1段階は@で行っているので、残りの第2段階から第10段階を行います。
M 頂点を中心として弧を描き、基本のミトブによって書いた線と、底辺との2つの交点にコンパスの芯と針が当たるようにコンパスの幅を調整します。
N 基本のミトブによって書いた線と弧の交点にコンパスの針を当て、Mで描いた弧と交わるように弧を描きます。2つの弧の交点は、ミトブによって書いた線の2倍の角度を示す点です。頂角を中心として同じ形の二等辺三角形が2つできることからそれがわかります。
O Nで書いた交点と角の頂点に定規を当て、コンパスの芯を使って定規に沿って線を引いて完成です。
第2象限のミトブは、基本のミトブの10段階と合わせて16の段階から構成されます。
はじめに第2象限の角に対して「角の2等分」を行って、第1象限の角にします。次にその第1象限の角に対して「基本のミトブ」を行います。そして最後に「角の移動」を行って基本のミトブで求めた角を2倍します。こうして第2象限の角を3分の1にすることができました。
第2象限のミトブを練習すると、数学の教科書で「基本の作図」とされるもののうち、「垂線の作図」「平行線の作図」「角の二等分」「角の移動」が正確にできるようになります。
第3象限(180°〜270°)の角の三等分技法です。
@ コンパスを好きな幅に開き、コンパスの針を3等分したい角の頂点に当てて円を書きます。これを第1の円とします。
A 頂角を原点として、第3象限にある斜線を第1象限上に延長して書きます。
B〜J ステップ@〜Aで書かれた線に対して「基本のミトブ」を行います。基本のミトブの第1段階は@で行っているので、残りの第2段階から第10段階を行います。
K 角の頂点にコンパスの針を当て、第2象限の方向から、基本のミトブで書いた線と交差するように弧を描きます。
L Kの交点にコンパスの針を当て、その弧と交差するように新たに弧を描きます。こうして基本のミトブによって書いた線の角度に、180°の3分の1である60°を加えることができました。これは線の上に正三角形を書く要領と同じです。
M ステップK〜Lで描いた弧の交点と角の頂点に定規を当て、コンパスの芯を使って定規に沿って線を引いて完成です。
第3象限のミトブは、基本のミトブの10段階と合わせて14の段階から構成されます。
はじめに第3象限の角から180°をマイナスして、第1象限の角にします。次にその第1象限の角に対して「基本のミトブ」を行います。そして最後に正三角形を書く要領で180°の3分の1である60°をプラスします。こうして第3象限の角を3分の1にすることができました。
第4象限(270°〜360°)の角の三等分技法です。
@ コンパスを好きな幅に開き、コンパスの針を3等分したい角の頂点に当てて円を書きます。これを第1の円とします。
A 角の頂点から左へ横軸を延長して書きます。
B 横軸と円の交点の一つにコンパスの針を当て、横軸の上で円と交わるように印をつけます。
C 横軸と円のもう一つの交点についても同じようにします。(BCの交点は、それぞれ正三角形の2つの頂点を書く要領と同じです)
D Bの交点にコンパスの針を当て、円の上側に弧を描きます。
E Cの交点についても同じようにします。
F DEで描いた弧の交点と角の頂点を結ぶと座標の縦軸を書くことができます。(B〜Fはコンパスの幅を変えずに垂線を書くための手順です)
G 頂角を原点として、第4象限にある斜線を第2象限上に延長して書きます。
H 座標全体を右へ90°回転させ、90°の位置が0°の位置に来るようにします。
I〜R ステップ@〜Hで書かれた線に対して「基本のミトブ」を行います。基本のミトブの第1段階は@で行っているので、残りの第2段階から第10段階を行います。
S座標全体を左へ90°戻して完成です。
角の三等分の判定は、照準角を表す2つの線と第1の円との交点の幅にコンパスを開いて、その3倍が基準角になっているかどうかで確かめることもできます。
第4象限のミトブは、基本のミトブの10段階と合わせて20の段階から構成されます。はじめに横軸と縦軸の座標を書き、次に第4象限にある斜線を原点から第2象限上に延長して書きます。これは180°のマイナスであると同時に、基準角から270°をマイナスした後、その3分の1である90°をプラスしたことにもなります。次に座標全体を右へ90°回転させ、90°の位置が0°の位置に来るようにします。そしてその角に対して「基本のミトブ」を行います。最後に座標全体を左へ90°戻して完成です。
作図の手順が多い順に並べると、一番多いのが「第4象限のミトブ」で20段階、次に多いのが「第2象限のミトブ」で16段階、それから「第3象限のミトブ」で14段階、最も少ないのが「第1象限のミトブ(基本のミトブ)」で10段階となります。基本のミトブを、7段階のスーパーミトブによって行う場合は、それぞれの手順が3段階ずつ少なくなります。
■ミトブを使った教材ゲーム
ミトブを時間内で終了し、分度器を使って判定を行います。
電卓やそろばん、または筆算で基準角を3で割り、その数値からミトブによる照準角を引いて誤差を調べます。
誤差は2度未満(+−1.66度)まで正解(当たり)とします。
ミトブを正解した時間に応じて、4級から5段の実力があると自己判定できます。
第1象限のミトブから第4象限のミトブまで、1分以内で終える毎に、4級から1級まで昇級します。
第1象限のミトブから第4象限のミトブまでの全てを、3分以内で終えると初段の実力があります。
そして3分から30秒早まる毎に1段ずつ昇段し、1分以内で全てのミトブを終えると、三武法五段の実力があるものとします。
【ミトブ法解答用紙(サンプル)】・・・角度はそれぞれの象限内で自由に決めます。
ミトブを行う時の手順は自由です。総合のミトブでは複数のミトブを手順毎に同時進行させてもOKです。
完成までにかかった時間で段級位がわかります。次の例を参考にしてください。
第1象限のミトブ 35秒 → 4級(1分以内)
第2象限のミトブ 58秒 → 3級(1分以内)
第3象限のミトブ 45秒 → 2級(1分以内)
第4象限のミトブ 50秒 → 1級(1分以内)
ミトブ総合 2分59秒 → 初段(3分以内)
ミトブ総合 2分29秒 → 2段(2分30秒以内)
ミトブ総合 1分59秒 → 3段(2分以内)
ミトブ総合 1分29秒 → 4段(1分30秒以内)
ミトブ総合 0分59秒 → 5段(1分以内)
主審と副審を置く場合は、副審が分度器を持って角度を測り、主審が電卓などで計算して判定します。
たとえば次のようにします。
副審「第2象限のミトブ。基準角 124度。照準角 43度」
主審「当たりです」(124÷3=41.33 41.33−43=−1.66)
副審「第4象限のミトブ。基準角 316度。照準角 107.5度」
主審「誤差 2.17度。はずれです」(316÷3=105.33 105.33−107.5=−2.17)
誤差2度未満・・・ 「当たりです」 と言います。
誤差2度以上・・・ 「誤差○度。はずれです」 と、2度以上の誤差の数値を先に言います。
ミトブを2人以上で対戦するゲームです。同じ基準角の線が書かれた紙に、数人がそれぞれミトブを実行します。
1人が完了し、「できました」と言って手を挙げると、他の人も定規とコンパスを置かなければなりません。
分度器と電卓などを使って、基準角の3分の1と、書かれた照準角との誤差を求めます(誤差2度未満で正解とします)。
点数は第1象限のミトブ正解で10点、第2象限のミトブは20点、第3象限のミトブは30点、第4象限ミトブは40点とし、100点満点です。
ミトブを行う時の手順は自由です。複数のミトブを同時に行ってもOKです。
手を挙げてゲームを止めた人と他の人が同じ得点である場合は、他の人が勝ちになります。
「宇宙砲ミトブ」は、子供たちが定規とコンパスに親しむためのゲームです。誰でも楽しめるように、標的の大きさを自由に変えることができます。
「宇宙砲ミトブ」は、地球に迫って来る巨大隕石を、地球防衛軍の一員であるプレーヤーがミトブ砲で攻撃破壊するというゲームです。
紙を用意し、下に基準角をあらわす底辺と斜辺を書きます。これは、レーダーに映った隕石の方角の3倍の角度を示す影です。
下に書かれた基準角の3分の1を分度器を使って求め、その角度を延長した位置(紙の上方)に隕石を書きます。隕石を大きめに書くほど、ミトブ砲が命中しやすくなります。
隕石はプレーヤーから見えないようにします(上方を折り曲げるなど)。
プレーヤーはミトブを実行し、基準角に対して3分の1となる照準角を示す線を書き、ミトブ砲を発射します。
判定者は隕石が見えるようにし、長めの定規を使ってプレーヤーが書いた線を延長して、ミトブ砲が隕石に当たったかどうかを判定します。
子供の作図能力に応じて、隕石を大きくしたり、小さくしたりしてください。
物語「教材作家」第13話では、コスモ定規という特殊な定規を使った角の三等分と正九角形の作図法をご紹介しました。
ここでは定規とコンパスを使ったミトブ法による正九角形の書き方についてお話しします。
円を書きます。ここで書かれた円の大きさは、正九角形の外接円の大きさになります。
円の中心に定規を当て、下側の交点に印を付け、円の中心から上へ線を引きます。
円の下側の印にコンパスの針を当て、弧を描く要領で円との2つの交点に印を付けます。(この2点と上側の交点を結ぶと正三角形が書けます)
円の上側の印にコンパスの針を当て、弧を描く要領で円との右側の交点に印を付けます。
そして円の左下と右上の点に定規を当て、中心から右上へ線を書きます。書かれた2つの線の角度は60°になります。
円の中心から右上へ書かれた線が水平になるように図を動かします。(図が書かれた紙を30°右へ回します)
2つの線が成す角の三等分線を作図するために「基本のミトブ」を行います。(上記は7段階のスーパーミトブによる作図です)
基本のミトブで書かれた照準線(角の三等分線)は、60°を20°と40°に分ける位置にあります。ここで図の位置を戻します。(図が書かれた紙を30°左へ回します)
コンパスの針を円の一番上に合わせます。そして照準線と円の交点にコンパスの芯を当てます。この2点を結ぶ線は、正九角形の一辺の長さになります。
なぜならこの2点を円の中心と結んで二等辺三角形を作ると頂角は40°になり、40°は9倍すると360°になるからです。その位置で1つめの円を書きます。
円の下側に書かれた2点(正三角形を構成する)にも、順にコンパスの針を当て、2つめと3つめの円を書きます。
円周上の9点(円と3つの小さな円との交点。そして3つの円の中心点)を線で結ぶと、正九角形や星形正九角形になります。
次に、定規とコンパスを使ったミトブ法による分度器の書き方についてお話しします。
分度器の形である半円形を書き,中央に90度を示す垂線を書きます。
半円はできるだけ大きく書いたほうが作図しやすくなります。
正六角形の作図法を使って60度(360°÷ 6)に印を付け、
60度を2等分して30度、さらに2等分して15度に印を付けます。
次に黄金直角三角形を作り、
正五角形の作図法を使って72度(360°÷ 5)に印を付けます。
72度を2等分して36度に印を付け、直角を2等分して45度に印を付けます。
コンパスの幅を、45度と36度の幅9度に開きます。
9度の幅で、15度を軸に、24度と6度に印を付けます。
さらに24度を軸に、33度に印を付けます。
そして、半円の中心から24度の印を結ぶ線を書きます。
24度を基準角としてミトブ法を実行し、その3分の1である照準角の8度に印を付けます。
コンパスの幅を、36度と33度の幅3度に開きます。
3度の幅で、0度を軸に、3度に印を付けます。
コンパスの幅を、8度と6度の幅2度に開きます。
2度の幅で、3度を軸に、1度に印を付けます。
2度の幅で、0度を軸に2度に印を付け、2度を軸に4度、8度を軸に10度、10度を軸に12度、12度を軸に・・・と、偶数の目盛りを付けて行きます。
2度の幅で、3度を軸に5度に印を付け、5度を軸に7度、7度を軸に9度、9度を軸に11度、11度を軸に・・・と、奇数の目盛りを付けて行きます。
最後に5度間隔、10度間隔で目盛りを長めにするなど形を整えて完成です。
角度を調べる場合は、作図した分度器上に角の移動を行います。
分度器の中心と、作図による交点に定規の縁を当て、分度器の目盛りを読んで角度を調べます。
直線定規や三角定規の目盛りと、分度器の目盛りは、見掛けは良く似ていますが、手作りできるのは分度器の目盛りの方です。
定規の目盛りは、国際的に定められたメートルという単位(1秒の299792458分の1時間に光が真空中を伝わる行程の長さ)を基に付けられているので自作はほとんど不可能だと言えるでしょう。
分度器は、定規とコンパス、または直線が書ける板と、コンパスの代わりになる糸と鉛筆などがあれば手作りできる教材だと言うことができます。
「角の三等分」に関連して、「紙の三等分」についてもお話ししましょう。
手紙やA4サイズの書類などを、簡単できれいに三つ折りするための実用的な方法です。
@三等分したい紙の両端を両手で掴んで、はじめに正三角形の形を作ります。(二等辺三角形だとうまくいかないと思います。なぜでしょうか?)
A一方の端を、反対の角に「付け」て
B少し「引き」ます。(枚数が多いほど長めに引きます)
Cその位置で内側を折って、
Dその折り目に合わせて、外側を折ります。
以上が、紙の三等分技法の「ツケヒキ法」です。
ツケヒキと言えば、数千年の歴史を持つボードゲーム「囲碁」の用語である「ツケヒキ定石」が有名ですが、これは教材用語の「ツケヒキ法」です。とても簡単で便利な方法だと思います。ぜひご活用ください。
2011年12月1日 川内尋嗣(手作り教材くらぶ)
【ご意見・ご感想】
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。ご意見、ご感想をお寄せください。また、お気付きの点などありましたらお知らせください。
【関連資料】